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雨が降った。傘は生憎、持ち合わせていなかった。
―――それでも誰かが傘を手向けてくれるのは、必然だった。
「@@…さん?」
「ん?あ、筧くん!」
横断歩道の赤で止まっていた私に声がかかった。
数メートル先に居たのは、マネをやってるアメフト部の後輩の筧くんだった。
私の確認が取れると、彼はすぐに傍に来て傘を傾けてくれた。脚が長いので、一瞬のことだった。長い影がかぶさった。
気休め程度に腕で雨を避けてはいたが既にかなり濡れていた。それでも傘はとてもありがたかった。
「うわーごめんね!もう、雨降るなんて思わなかった」
「朝は結構晴れてましたからね」
「そうそう。油断したなぁ」
筧くんは鋭く見える目を和ませて会話してくれた。
背も高く、体つきも身長に見合う大きさの彼と私が一緒に傘に入れば、ただでさえ一人でも窮屈そうな傘の中はますます狭くなった。
筧くんの身体は、多分結構はみ出ているのだろう。
そして私の身長にあわせて少しかがまれた体勢も、きつさなんか微塵も気にしていない風に装われていた。
筧くんはとてもいい人で、いい後輩で、いい男の子だ。
それでも、そんな彼の親切に気付かないふりをして彼と会話した。
彼に甘えた。
彼ごしの、あの人に甘えた。
筧くんと、あの人の優しさは、似ていた。
雨は私を傲慢なくらい卑屈にさせた。
どうしようもなく屈折した私を、まただれかが助けてくれる。
それは私が望もうが望むまいが繰り返される。
私は気の毒なくらい運が良いのだ。
そして運の悪い、とても優しい人が私を助けてくれる。
不条理なのだと思う。
優しい人を犠牲に、私の我侭は成り立った。
優しいね、筧くん。
そう言えば、私はまた、醜い自分一人でいなくていいのだ。
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マジいみわかんね・・・
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